冬の日や寒い春先など気温が低い日に、トラクターのエンジンが掛からないことがありますね。エンジンがかからない場合考えられる原因はいくつかありますが今回は代表的なものを紹介して、その対処法を見ていきます。
ディーゼルエンジンのグロー(予熱)不足
低温時や冬場にエンジンが掛かりにくくなる一番の原因が予熱不足になります。
ディーゼルエンジンは、エンジンシリンダー内の温度がある程度上がっている状態でないと、圧縮燃料がシリンダー内で爆発できず、セルを回してもエンジンがかかりません。かからないからといってセルを回し続けるとバッテリーが上がってしまいます。
トラクターにはシリンダー内を予め温めてくれる装置として「グロープラグ」が搭載されています。気温の低い日は予熱時間を普段よりも長めに取ることでエンジンが掛かりやすくなります。
通常はキーをON状態にすると【予熱】が開始されます。この時グローランプが点灯します。
エンジンの予熱が完了するとグローランプが消えるので、予熱が完了するまで待ってから始動(スターターON)にします。
冬場は予熱(グロー)を2~3回繰り返し、十分予熱してから始動(セルスタート)するとよいでしょう。
低温化でのバッテリー容量低下
バッテリーは、低温になると容量が低下しやすく、エンジンの始動に必要な電力が不足する可能性があります。その年に交換したばかりのバッテリーでも、気温5℃を下回ると容量や起電力が低下しはじめます。これはバッテリー内部の電解液と電気を生み出すための化学反応が低温下では弱まるために発生します。
基本的には温めることで解消しますので、バッテリーを外して暖かい場所に運んでから、充電機で充電しましょう。
バッテリーを外す際は先にマイナス端子から外してから、後でプラス端子を外します。
充電後に取り付ける時は、先にプラス端子から取り付けて、後でマイナス端子を取り付けます。
充電器は、農機・産業用の大容量バッテリーでもいろいろと自動的に調整して充電してくれる
セルスターのドクターチャージャーProが初心者にも簡単でオススメです。
燃料(軽油)の凍結
中古のトラクターを遠方から購入した場合に起こりやすいトラブルが、燃料である軽油の凍結です。凍結といってもカチコチになるわけではなく、ドロっとした状態で流れにくくなります。
軽油は日本各地で季節ごとに5種類の軽油が販売されています。温暖な地域で販売される軽油は、積雪地の気温では凍結することがあります。 これは軽油の成分であるパラフィン(ワックス:ろう分)の成分が、凝固点を下回ってしまい、液状から結晶(固体)になるため発生します。 パラフィン結晶は燃料フィルターを詰まらせるので軽油がエンジンに行かないため、エンジンがかからなくなります。
そのため、遠方から中古トラクターや農機具を購入した際は、寒くなる前に燃料を自分が住んでいる地域のものに入れ替えておくとよいです。
応急処置としては、トラクターのボンネット部やカバー類を外して、大型ヒーター等で温めます。ある程度機械とヒーターの間に距離を設け、火災に十分注意して目を離さないようにして下さい。
また、コモンレールエンジンでは結晶がノズルに詰まってしまうと修理費が大変高額になりますので注意が必要です。
農家さん家でよく見るナカトミのヒーターがここでも役立ちます。
安全スイッチ類の凍結
トラクターには、エンジン始動してOKかどうかを判定するために、安全スイッチが多くついています。
代表的なものは、前後進のシャフトレバーのニュートラルスイッチやクラッチペダルのスイッチ、PTO停止スイッチです。
トラクターを真冬に外に置いておくと、湿気などがスイッチの接点についたまま凍結し、安全スイッチが誤作動した状態になる事があります。
変速装置・PTOスイッチ類が、全てニュートラルになっているか再度確認します。
ガリガリと違和感がある場合は、凍結している場合があるので該当の箇所をよく動かすかカバーを外して確認します。
以上、冬場のエンジン始動の参考になれば幸いです。